1.慢性的な空腹感

人間はなぜお腹がすくのでしょう。

理由の一番の原因は、血糖値の低下です。中性脂肪は何十日も何も食べずに生き延びられるほどの量が体に蓄えられているのですが、糖質だけは体に沢山蓄えられないんです。

糖質、つまりブドウ糖は非常に不安定な物質であり、すぐに他の物質と結合してしまうので、安定な性質であるグリコーゲンという形で体に蓄えられます。

グリコーゲンの保管場所は、基礎代謝のような生命活動の為に肝臓に蓄える「肝グリコーゲン」、急激な運動時に使用するエネルギーとして筋肉に蓄えられる「筋グリコーゲン」です。

肝グリコーゲンの許容量は約400kcal、筋グリコーゲンの許容量は個人差はありますが、大体1200kcal程度です。筋グリコーゲンは強度な運動をしないと消費されませんが、肝グリコーゲンは、唯一ブドウ糖しかエネルギー源として利用できない機関である脳と赤血球のために、7.5g/時(30kcal/時)の割合で消費されます。つまり、肝臓グリコーゲン貯蔵量が100g(400kcal)ですから、約13時間分のエネルギーを蓄えることができるということですね。

半日以上、何も飲まず食わずの状態が続くと、脳のエネルギーが枯渇することを意味します。ただ、枯渇しそうになっても、蛋白質を分解してアミノ酸を生成し、糖新生によりよって、アミノ酸と脂肪酸を合成することによってグルコースを精製するといった防衛機能を持っていますので、半日何も食べなくても、すぐに死ぬようなことはありませんが、それはあくまでも非常緊急手段であり、体に大きな負担をかけますので、全く好ましい状況などではありません。

空腹感を感じる場合、原因はストレス、摂食障害、糖尿病、低血糖など色々ありますが、もっともストレートなのは胃や腸などの消化器の異常によるものです。


血糖値が下がることによる空腹感も、副交感神経の刺激によって胃酸の分泌が多くなり、その結果胃の痛みや飢餓反応が発生するわけで、空腹感の直接の原因は胃にあるといってもいいでしょう。


そもそも、「空腹感」とは脳が空腹を感じることです。つまり、実際に胃袋の中がからっぽかどうかではなく、脳が「私は腹が減った」と思っている時に感じる感覚です。その証拠に、手術で胃を完全に取り去った人でも空腹感を覚えます。

実は、空腹感とは脳が「身体にエネルギーが足りない」と認識することによって発生するものです。この場合のエネルギーとは、糖質です。つまり、空腹とは脳が糖質を必要としている状態を指します。

体内にエネルギーつまり栄養を補給しているものは、もちろん血液です。この血液はそれ自体が体内機能の維持のために、自らの構成要素を一定に保とうとします。その中のパラメータのひとつに「血糖値」があります。


血糖値は、身体がエネルギーを取り込む(食事や点滴などで栄養素を吸収する)と上がり、長期間食事をしなかったり、運動してエネルギーを消費したりすると下がります。そして、血糖値が低下した状態が続くと身体の活動レベルも低下します。

身体の各機能つまりいろいろな臓器は、それぞれがその機能を維持するためにエネルギーを補給するしくみがあります。例えば長期間外部からのエネルギー補給がないと、身体は体内に蓄積されている脂肪を分解してエネルギーに変換し、活動を維持します。しかし、脳は体内の他の臓器と違って、エネルギーとして使用できるのは血液中の糖質だけです。よって、血液中の糖質が不足する、つまり血糖値が下がると脳はエネルギーの補給を求めます。これが、具体的には空腹として認識されます。空腹感は脳の機能維持のための信号というわけです。

ただし血糖値だけが空腹感の元かというとそうではなく、もちろん胃も関係しています。食事をしないでいると、胃の中の食物がなくなり、相対的に胃酸が増えます。この胃酸の刺激が脳に信号を送り、空腹感として認識されるわけです。

以上のことから、空腹感を解消するためにはまず、食事をすることです。ダイエットなどであまり食事をとりたくない場合は、とりあえず血液中の糖質を補給するために飴玉を舐めるのが効果的です。飴玉はほとんどが糖質ですので、少ないカロリーで空腹感を解消できます。また、水を飲むと胃の中の胃酸濃度が薄まるので、多少の効果があります。ガムを噛むことによって、ストレスを紛らわせて空腹感を誤魔化すこともできます。ダイエット用のキャンディーやガムも市販されています。

常に空腹感がある場合は、身体に何かの不調が発生している可能性があります。特に過剰な空腹感を感じる場合は「過食症」または「多食症」と呼ばれ、以下の原因が考えられます。

・ストレスによる不安感
 精神的なバランスが崩れた状態で、強烈な空腹感を覚えることがあります。これは過食症や多食症にストレートにつながる、一番多い原因です。

・摂食障害
 拒食症と過食症の総称で、精神障害に分類されます。原因は心理的なストレス、状況不適応、コミュニケーション不全などで、依存症の一種です。拒食症と過食症は同根で、一方からもう一方に移行する場合も珍しくありません。

・糖尿病
 糖尿病の症状として、インスリンの分泌が不足するかインスリンの機能不全により身体の細胞へのブドウ糖の供給が滞り、その結果脳は身体が飢餓滋養対にあると誤認して強烈な空腹感を訴えます。この場合、食事をとっても空腹感が治まらず、ますます悪化します。インスリンの補給により空腹感は解消します。

・低血糖
 脳は体内の他の臓器と違って、エネルギーとして使用できるのは血液中の糖質だけです。よって、血液中の糖質が不足する、つまり血糖値が下がると脳はエネルギーの補給を求めます。これが、具体的には空腹として認識されます。

・月経前症候群
 女性の排卵から月経開始までの時期に現れる身体的・精神的な不快な症状を総称して月経前症候群と呼びます。その症状は空腹感だけではなく、胸が張る、下腹部に痛みがあるなどの肉体的なものや、いらいらしたり悲しくなったりという精神的なものまで、人によってさまざまです。

・甲状腺機能亢進症、甲状腺疾患
 甲状腺に慢性的に炎症が発症し、甲状腺ホルモンの過剰な生成を行うものです。空腹感の他に、汗かき、脈のみだれ、心悸亢進、体重の減少、疲れやすい、集中できないなどの神経的な症状が発現します。

・薬剤
 副腎皮質ステロイドや一部の抗鬱薬などの副作用で空腹感を覚えることがあります。

空腹感と血糖値は、大いに関係しています。
まず、「満腹」とか「空腹」とかを認識するのは脳だということです。いくら胃の中がからっぽでも、またいっぱいでも、胃が満腹したり空腹になったりするわけではありません。では、脳はどうやって満腹感や空腹感を認識するのかというと、血液中のブドウ糖の量(血糖値)によってなのです。そして、血糖値は肝臓に蓄えられたグリコーゲンによって維持されています。


尚、グリコーゲンは動物における貯蔵多糖または動物デンプンと呼ばれています。体内で余剰エネルギーを糖に変えて維持している物質です。これが増えると予備の栄養源が十分あることになり、また減ると予備の貯蔵エネルギーが少なくなるわけです。

ところで、人間は空腹を感じると食物を摂取し、満腹になります。一見、非常に単純な関係にみえますが、実は裏で次のような仕組みになっています。

(空腹を感じる場合)
・生活のため活動することによってエネルギーを消費し、それに伴い肝臓中のグリコーゲンが減少する。
・グリコーゲンの減少に伴い血糖値が下がる。
・血糖値が下がることにより、脳が「空腹」を認識する。

(満腹を感じる場合)
・食事をすることにより、肝臓と骨格筋で炭水化物からグリコーゲンが合成される。
・肝臓中のグリコーゲンが増加する。
・グリコーゲンが増えることにより、血糖値が上がる。
・血糖値が上がることにより、脳が「満腹」を認識する。

また、糖尿病に罹患している場合は、空腹感と血糖値が連動しません。糖尿病は血糖値が恒常的に高く、空腹感に従って大量に食べると、さらに血糖値が上がって症状が加速度的に悪化します。

膵臓から分泌されるインスリンが不足することによって、血糖値の上昇を抑えられなくなるからで、強い空腹感を感じる時は、逆に食事を控えるなどの対処が必要です。

空腹感でヤケ喰いということはよくある話ですが、ストレスは関係するのでしょうか?


ストレスの原因には精神的なものと肉体的なものがありますが、空腹によるストレスも存在します。これは肉体的な原因によるストレスということになりますが、そのメカニズムは次の通りです。

まず脳が空腹感を覚えると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。このホルモンは副腎を刺激し、その結果副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎皮質刺激ホルモンにより、副腎の内側からアドレナリン・ノルアドレナリンやモルヒネ様物質が分泌されます。
これらの物質は全て、脂肪の分解を促進する機能があります。脂肪の分解により、遊離脂肪酸が増加し、その結果空腹感を感じます。

これは空腹感を感じた時の通常の機能ですが、問題はこの一連の流れが交感神経を介して機能していることです。脂肪細胞には交感神経がつながっているため、交感神経が活発に活動すると、脂肪細胞は分解され、その結果空腹感を伝える信号が脳に伝達されるというわけです。

ところが、ここで身体(脳)がストレスを感じていると、その分交換神経が過敏に反応します。それはすなわち脂肪細胞の分解を促進させ、より強く空腹感を感じることになります。また空腹時には、脳下垂体から成長ホルモンが分泌され、これによってさらに脂肪の分解が進みます。


つまり、空腹を感じるメカニズムが、ストレスがかかることによって拍車がかかり、摂食中枢を強烈に刺激してしまうため、空腹感が増大するというわけです。

ストレスによって増大した空腹感は、さらにストレスを増大させます。このイライラによってさらに空腹感が増し、それがまたストレスを強化するという悪循環は「正のフィードバック」と呼ばれています。なので、ストレスがあまり増えないうちに、飴玉でも舐めて脂肪細胞の分解を止めることが重要です。

血糖値に影響を与えるのは炭水化物だけ

三大栄養素のうち、血糖値に影響を与えるのは炭水化物だけです。炭水化物はブドウ糖に分解されてから体内に入ります。

体内にはいったブドウ糖は肝臓に蓄えられてから、脳と血液に供給されますが、肝臓はブドウ糖を100gしか蓄えることができません。
一方、ご飯1杯に約40g、ラーメン1杯に約80gの炭水化物が含まれるので、現代人の食事では、肝臓がすぐにブドウ糖でいっぱいになり、溢れます。

肝臓から溢れたブドウ糖は血液中に滞留しますが、これが食後の高血糖で糖尿病の原因になります。
血液中に滞留したブドウ糖は徐々に体脂肪組織に取り込まれて肥満の原因になります。

・カロリーと炭水化物を区別して考えること、
・炭水化物を1食に60g以下で食べること。

このようにすると、糖尿病だけでなく肥満も解消できます。

習慣によるもの

インスリンの分泌が足りないかインスリンが十分に働いていないため、慢性的な空腹感を訴えるケースも少なくありません。

というのもインスリンはブドウ糖を細胞に届ける働きをしているため、食事を摂ってもインスリンの作用が十分でないと栄養分が足りない、すなわち飢餓状態として脳に認識されてしまうことがあります。

こうなると食事量が多くなってしまい、血糖値がさらに上昇することに繋がり悪循環が引き起こされてしまうのです。

人間は、血糖値が低下して空腹感を感じる、食事をすることにより満腹感を感じます。

これは、レプチンに指令が届くことにより、空腹感や満腹中枢が刺激されるんです。しかし、慢性的に食べ過ぎの人、ダラダラ食いをする習慣のある人は、空腹感などを無視した食生活により、常に血糖値が高い状態に慣れてしまい、レプチンの感受性が低下しています。よって満腹中枢が正しく刺激されず、更に食べ過ぎの食生活に走ってしまう傾向があります。

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また、本来なら少しくらい血糖値が下がっても、普通に我慢できる程度の微々たる空腹感しか感じないのですが、高血糖状態に慣れてしまっている人は、満腹状態が普通の状態であると感じるため、少しでも血糖値が下がっただけでお腹がすいたと感じ、満腹状態にしないと気が済まないんです。だから、ダラダラ食いをしたり、口に何かを入れていないと落ち着かないんですね。

習慣ののリセット

このような方は、一度リセットすることをお勧めします。多少辛いかも知れませんがやってみてください。終わった後、びっくりするほどの変化を感じます

初日 半日以上絶食などをして、極度な空腹感を作るんです。そして食べて満腹感を感じます。

2日目 食事制限をして強い空腹感を作り、食べることによって満腹感を得る。
3日目 食事制限を少し緩和するがお腹がすくまでは絶対に食べない。
4日目 特に食事制限はしなくても構わないが、お腹がすくまでは絶対に食べないようにする。

といったような、必ず空腹感を感じてからしか食べないという生活を数日続けてみて下さい。最初は非常に辛いと思いますが、徐々に慣れてきますし、徐々に食事制限も緩和させていくので、辛さも感じなくなってきます。とにかく、本当にお腹がすくまでも絶対に食べないようにする、という生活を1週間も続ければ、ある程度慣れます。

そして、それを普通の食生活としてください。

習慣のリセットで体の中で何が起こる?

脳は、7.5g/時の割合で糖質を消費。よって人間が生きていくためには一日あたり180gの糖質が必要。その脳のエネルギー源として蓄えられる肝グリコーゲンであり、肝グリコーゲンの許容貯蔵量は100g。一度の食事により最大13時間分のエネルギーしか蓄えることが出来ないのです。

・肝グリコーゲンの残量が20gを切ると、肝グリコーゲンの枯渇を防ぐため、糖新生により、蛋白質(アミノ酸)から糖質を作り、それを脳のエネルギー源に当てる。

・糖新生の能力には限界があり、アミノ酸から生成できるグルコースの量は一日に80g程度。よって、糖新生のみでは100g不足することになる。糖新生のみで脳のエネルギー源を100%補給することは不可能。

・アミノ酸による糖新生では対処できなくなってくると、体は緊急非常処置として、糖新生によりアミノ酸から生成したグルコースを利用する糖代謝経路から、中性脂肪を分解する際に副産物として生成されるケトン体を利用する脂質代謝経路へ切り替える。ケトン体を利用し始めたら脳の活動能力が一気に低下し、一日の脳の糖質消費量は180gから44gまで激減する。基礎代謝の大幅低下を招き、体力、抵抗力、思考能力、全てが低下する。

以上を踏まえた上で、


(2)グルコガン分泌の増加
炭水化物を絶ち、一日の糖質の摂取量を20gに制限することにより、常に低血糖状態を作る。その結果、栄養不足状態を補うために、体はグルコガンという中性脂肪の燃焼を促進させるホルモンを大量に分泌させ、中性脂肪が大量に消費されることになる。

(3)糖新生
肝グリコーゲンの残量が20gを切るような低血糖状態が続くと、糖新生によりアミノ酸からグルコースを生成量が一気に増える。この糖新生の能力により、たとえ糖質を絶っても血糖値が下がりきることを防げるため、低血糖状態を維持することができ、グルコガンの分泌が多い中性脂肪が燃焼される状態を常にキープすることが出来る。

(4)ケトン体
人間の体は、普通の状態では、肝グリコーゲンや糖新生によりアミノ酸から生成したグルコースをといった糖を脳のエネルギー源として利用するが、ケトンモードに入ると、脳へのエネルギー源すら、脂質から取り出して利用するようになる。(ケトン体は脂質を元に生成されるので)。これにより、脂質の消費割合が増える。

(5)食事内容復旧
2週間を目処に、糖質の摂取量20gといった制限を解除。低血糖状態に体を慣れさせた上で、一週間あたり糖質の摂取量を10gずつといったように徐々に増やしていき、3ヶ月程度かけて最終的に180gにまで戻す。この期間(回復期)を経て元の食生活に戻る。


まとめると、
・糖新生という能力により、中性脂肪が絶えず燃焼する低血糖状態を長時間維持するこが出来る。
・ケトン体モードになると、脂質消費割合が増える。
・ケトン体は強い食欲減退効果も持っているため、空腹無しに減量することが出来る。