私たちは、毎日食べることでエネルギーを補っています。そのエネルギーは、主に「ブドウ糖」と「脂肪(体脂肪)」として体の中に取り込まれ、必要なときに使われます。
けれど、実は脳は脂肪を直接エネルギーとして使うことができないことをご存じでしょうか?ここでは、「なぜ脳はブドウ糖が必要なのか?」「食べたものがどのようにエネルギーになるのか?」をやさしく説明していきます。
食べたものはどうやってエネルギーになる?
私たちが食事をすると、体の中で栄養素が分解・吸収されます。特に次の3つの栄養素が重要です:
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炭水化物 → 小腸で分解されてブドウ糖として吸収される
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脂質(あぶら) → 脂肪酸やグリセロールに分かれて体脂肪として蓄えられる
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たんぱく質 → アミノ酸に分解されて、筋肉や体の材料になる
食事でとったブドウ糖はすぐにエネルギーとして使われますが、使いきれない分は一部が「グリコーゲン」として肝臓や筋肉に貯蔵され、さらに余ると「中性脂肪」となって体脂肪に変わって蓄積されます。
脳はブドウ糖しか使えない
ここで大事なのが、脳はブドウ糖しか使えないということです。脂肪やアミノ酸は、他の臓器や筋肉では使えますが、脳は基本的に脂肪を直接エネルギーとして使えないため、血液中のブドウ糖が下がると、すぐにエネルギー不足になります。
そのため、たとえ体に脂肪がたくさんあっても、ブドウ糖が不足すると脳がエネルギー不足に陥ってしまうのです。
体脂肪からブドウ糖は作れない?
「脂肪があるなら、それを使ってブドウ糖を作ればいいじゃないか」と思うかもしれません。でも、体脂肪(脂肪酸)からはブドウ糖を作ることができません。
脂肪の分解で出てくる「グリセロール」はわずかに糖新生に使えますが、メインの脂肪酸からはブドウ糖は作れません。つまり、脂肪がどれだけあっても、脳のためのブドウ糖は作れないのです。
ブドウ糖を作るために筋肉を分解する
では、体の中でブドウ糖が足りなくなったとき、どうやって脳にエネルギーを届けるのでしょうか?
その答えは、「筋肉」です。筋肉に含まれている「たんぱく質(アミノ酸)」を分解して、肝臓でブドウ糖に作り変えるのです。これを「糖新生(とうしんせい)」といいます。
この仕組みは、ちょうど骨のカルシウムが不足したときに、骨を溶かして補うような働きと似ています。体は脳を守るために、自分の筋肉を削ってまでエネルギーを作ろうとするのです。
どれくらいブドウ糖が必要?
脳はとてもエネルギーを使う臓器で、1時間に約6gのブドウ糖を必要とします。1日(24時間)ではおよそ144gのブドウ糖が必要です。
もし炭水化物を全くとらない「糖質制限ダイエット」などをしていると、体はこの144gのブドウ糖を、筋肉からアミノ酸を取り出して作るしかなくなります。
毎日筋肉が失われてしまう?
ブドウ糖もアミノ酸も、1gあたり約4kcalのエネルギーを持っています。単純に計算すると、毎日144gのブドウ糖を筋肉から補う場合、同じだけ(約144g)の筋肉が分解されることになります。
これは非常に大きな負担です。筋肉は代謝を保つ大切な組織であり、免疫や体温の維持にも関係しています。それが毎日削られてしまうと、体力の低下・代謝の悪化・リバウンドしやすい体質につながってしまいます。
まとめ:脳と筋肉を守るために、バランスのよい食事を
脳は脂肪をエネルギーとして使えず、ブドウ糖が必要不可欠です。しかし、脂肪からはブドウ糖が作れないため、糖が不足すると筋肉を分解して補おうとします。
だからこそ、極端な糖質制限や無理なダイエットはおすすめできません。脳と筋肉を守るためにも、適度な炭水化物とたんぱく質をしっかりととる、バランスのよい食事が大切なのです。